鑑賞手引き3

鑑賞の手引き(3)

1)日本刀の時代区分
 日本刀は時代によって大きく「古刀」と「新刀」に分類されます。「古刀」とは年号で言うと慶長の手前、文禄まで。「新刀」は慶長年号以降となります。西暦で言うと、慶長元年が1596年です。「古刀」はさらに「上古刀」と「古刀」に分かれ、「新刀」はさらに「新刀」と「新々刀」に分かれます。

上古刀
日本列島での刀の始まりから、日本独特の刀の形ができるまでの刀です。中国朝鮮風の直刀が主ですが、蝦夷が使った蕨手刀なども含まれます。状態の良いものは正倉院や古い社寺などごく限られた場所にしかありません。多くは出土品なので考古学的遺物の扱いですが、日本刀のルーツを探るうえで貴重です。時代で言うと古墳時代から平安時代初期までの刀です。

聖徳太子の太刀「丙子椒林剣」中国製

唐太刀(正倉院)

蕨手刀(正倉院)

古刀
 鎬造りで反りのある太刀の形は、大和朝廷の直刀と蝦夷の蕨手刀との融合によって完成し、その時代は平安時代中期頃と言われています。その後多くの地方で名工が現れました。特に鎌倉時代は日本刀の黄金期ともいわれています。

平家重代「小烏丸」(平安時代中期)

童子切り安綱(平安時代後期)

長船盛重(室町時代)

新刀
 天下統一により戦乱が収まると、各地方の刀鍛冶たちは新たな顧客を求めて城下町に移り住みました。平和な時代になって、本来武器であった刀が、より美術工芸品的扱いに変わっていきます。古刀の時代にはなかった華美な刃文の刀が人気を博しました。

助廣(江戸時代、大阪)

新々刀
 江戸時代末期に起こった復古思想が刀にも影響し、鎌倉時代や南北朝時代の名刀のコピーがはやります。また騒然とした社会情勢を反映して長い武骨な刀も見られます。

現代刀
 明治9年の「廃刀令」以降の刀をこう呼びますが、日清戦争や日露戦争当時のサーベルの中身や、第2次世界大戦の軍刀、戦後の美術刀剣などが含まれます。なお伝統的な材料と工法を用いて作られたものに限られます。現代の鋼材で作られた第2次世界大戦中の軍刀類は兵器ですので文化財の扱いにはなりませんし、所持もできません。現在では文化庁からライセンスを受けた刀鍛冶のみが伝統的材料と工法により刀を作ることができます。

2)あなたは「古刀派」「新刀派」?
 日本刀は慶長年号を境に「古刀」と「新刀」に分けられると言いました。なぜ古刀と新刀に分けるかというと、ごく大雑把に言って、古刀は主に武器として作られ、新刀はより美術品として作られたということです。もちろん古刀の時代にも美術工芸品的な要素を意識して作られたものもあり、平和な江戸時代にも武器としての性能を意識して作られたものもあります。ただおおよそ古刀と新刀ではその雰囲気が違うということです。刀には時代が反映しているのです。
 不思議なことには、武器として作られた古刀の方が美術品として作られた新刀よりも美しいと言う意見も多くあります。何を「美しい」と見るか?この違いが「古刀好き」と「新刀好き」を分けることになります。これから時々ツイッター上で刀を紹介していきます。気まぐれではありますが、できる限り古刀と新刀を取り混ぜて紹介していこうと思います。さあ、あなたは「古刀派」「新刀派」?